橋本梢さん①

キーワードは「少量多品目生産」サステナブルなチャレンジに取り組む【橋本園芸 橋本梢さん】

今回は、ふかやさいアンバサダーの福島が、「少量多品目生産」で野菜を使った加工品の生産から環境にやさしい麦ストローの制作まで様々なチャレンジに取り組む橋本園芸 橋本梢さんにお話を伺いました。

ゆり農家から少量多品目生産へ

茨城県生まれの橋本さん。高校卒業後、両親や先生方からの勧めで短大にて学びを深め、その後高校生の頃から興味があった造園業の専門学校に行き造園会社へ就職しました。専門学校で現在の旦那様とめぐり逢い、旦那様についていく形でゆり農家さんで深谷市での生活が始まりました。

子どもが生のニンジンやニンニクが好きだった事から、以前からご自宅でニンジンやニンニクを少し栽培していたとのことですが、畑を本格的に始めたのは2014年の大雪がきっかけです。異常なほどの降雪で関東地方を中心に大きな被害をもたらし、深谷市にも大量の雪が積もったことが記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。その大雪で橋本さんのゆりのハウスも被害に遭ったそう。復興まで1年かかりませんでしたが、かつてハウスが建っていたところの一部分を梢さんの圃場として、2019年より一人で少量多品目の野菜栽培を始めたということです。

少量多品目栽培はその名の通り、多くの種類の野菜を少しずつ生産する生産手法のこと。単品目栽培は、大量生産が可能ですが年間で旬の時期が限られてしまいます。少量多品目栽培は、一つ一つの野菜の生産量は少ないものの、一年を通して常に何かしらの旬が訪れるように栽培を行う、小規模生産者に適した手法であることから、いま注目を集めています。

橋本さんは、出来るだけ苗は買わずに種から育てることを意識しながら栽培を行っており、ニンジン・トウモロコシ・白ナス・ヤーコン・菊芋・オクラ・オカワカメ・トマト・ビーツ・ピーマンなど、様々な品目を生産しています。たくさんの品目を生産しているので、ご家庭ではほぼ野菜は購入せずに家族の分の野菜は十分収穫できているそうです。


少量多品目栽培の大きなメリットの一つとして、珍しい品種の野菜栽培にもチャレンジができるという点があります。野菜を栽培していく中でリコピンが豊富に含まれている京くれないというニンジンや黒ニンジンを栽培し始めました。そして、橋本さんはある挑戦に取り組みます。

野菜ソムリエサミット銀賞受賞、環境にやさしい麦ストロー作りも

お肌ツルツルでとってもきれいな50歳を過ぎているペルー人のお友達に、「どうしてそんなに肌がきれいなの?」と聞いてみたら「チチャモラーダを飲んでいるだけ」との返答がありました。

チチャモラーダとは、紫のトウモロコシとリンゴの皮・パイナップルの皮・シナモン・クローブのスパイスを合わせた飲み物のことです。「ノンアルコールのホットワインを飲んでいるようなスパイスの効いた感じでとっても飲みやすかった。」と話していました。橋本さんは、「これを作ってみたい!」と思い、紫トウモロコシの栽培にチャレンジしたのですが、失敗!

ここでくじけないのが橋本さん。

「だったら…紫トウモロコシの代わりに黒にんじんで作ってみよう!」

黒にんじんでも甘みが出て紫とうもろこしと味が大差ないものになるということが分かり、「これをお茶にすればいつでも飲める!」と製造を始めたそうです。そうして出来上がったのが、「黒にんじん茶」です。


お茶の次はチップの開発にも取り組みます。黒にんじんを蒸して乾燥させると、甘みも出て味良く出来上がりました。自信のある一品を2020年2月の野菜ソムリエサミットに「まるごと黒にんじん(黒にんじんチップ)」として出品。なんと野菜ソムリエサミット加工品部門で銀賞を受賞しました。


その後も黒にんじんを使った商品を開発。お茶やジャムなど、そのラインナップは少しずつ増えていきます。

橋本さんの挑戦は続きます。黒にんじんの他にも、バタフライピーと深谷市の伝統的な名産品、藍を使ったお茶、「青い藍茶」も開発。「青い藍茶」は大河ドラマ館でも販売しています。


農業に従事し、自然と向き合う中で橋本さんは、「農業は、自然環境と密接な関係にあり恩恵にあずかっているものなので恩返しの思いを込めまた環境負荷を軽減させたい、また、農福連携が出来たら、農業王国ブランドで、作業所等の利用者さんの所得向上になれば」との考えから、麦ストローの制作にも取り組んでいます。


更に肥料作りにも挑戦。「自然と向き合いながら、微生物が住みやすい環境を作りたい!」という思いから、に籾殻くん炭(肥料)も開発。


黒にんじんを使った加工品から深谷の名産品藍を使ったお茶、さらには自然環境に配慮した麦ストローや肥料まで、こちらも多品目生産で様々な挑戦を続けています。

農業をもっと身近なものにして、未来につなげる


橋本さんは、深谷市が取り組んでいる「農業シンデレラプロジェクト」に参加しています。その活動の一環であるマルシェなどを通じて、自分の野菜や商品がどんな人にわたるのかを直接肌で感じながら、消費者と直接話したり、交流出来る喜びが、様々なチャレンジの原動力となっているそうです。

「農業をもっと身近に、未来を担う子どもたちに職業の選択の一つとして、『農業』をあげてもらえるよう、これからも活動を続けていきたい」と話す橋本さん。

様々なことにチャレンジし止まることなく前に進んで行く橋本さん、これからも自然環境に良い農法で将来の農業に明るい光が差し込むような活動を重ねていってください。

取材・執筆:ふかやさいアンバサダー 福島玲子さん

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